グロテスクの海


金曜の夜。新宿。雨。
雨宿りをしながら、遅刻している友人を待つ。
行き交う人々を見ながら、人間の顔ってグロテスクだなあ、としみじみ思う。
特に笑った顔がグロテスクだ。


こないださうわ最悪雨じゃん早く来いよ彼氏の家に行くから居酒屋決まってますか傘無いんだけどアハハハうち安いですよいいから早く来いって今日はお疲れさまでした今からっすかハハハドンキ行こうドンキ終電ないよなこれからどうしようか全然大丈夫っすよマジ遅いんだけどハハ


グロテスクな濁流を浴び続けていると、なんだか修行をしているような気分になって来る。坊主。滝。
いい加減吐き気に耐えられなくなってきたところで、30分遅れて友人が到着した。手にはコンビニのシーチキンおにぎりを持っている。
悪かった。はいこれ。
そう言っておにぎりを差し出す友人。
僕は黙って受け取り、出来るだけグロテスクにならないように、怒った顔で言った。
許す!
友人が笑う。こういってはなんだが気持ち悪い。