2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

進化のほとり

「遅い。2分遅刻だ」 エジンタハラがトゲトゲした声で言った。いつもは30cmほどの浮遊が、今は2、3cmにまで下がっている。かなりいらついている証拠だ。彫りの深い顔に強い影が落ちている。 「そんなに怒るなよ。悪かった。ほら」 そう言って黄砂瓜を手渡す…

心の奴隷

文章を書くとどうしてもその時の感情に引きずられるよ。 そして今はとても恐ろしくて幸せなので、恐ろしくて幸せな文章しか書けない。 文体が変わることすら止められないのだね。 これはもはや心の奴隷だ。 鎖に繋がれながら、その鎖を誇りに思っている。 最…

電車

「なあ」 「ん?」 「なあおい」 「どうした」 「前からずっと疑問に思っていることがあるんだが」 「早く言えよ」 「電車ってなんで携帯で話すのが禁止なんだ?」 「それはあれだよ、ベラベラでかい声で喋られたら迷惑だからだろう」 「でかい声でベラベラ…

65536

ずっと一人で行きていくのかと思っていたよ。 ずっと一人で行きていくのかと思っていたんだ。 65536進数の世界に僕は生きる。 彼女はきっと131072進数の世界に。 あの人は…16進数ぐらいじゃねえの? 彼女には世界がどう見えているんだろうか。 彼女には世界…

ふりこ

最低な一日の帰り道。 空からパラパラと雨が降る。 全くこの雨は空気を読んでくれるねアホか死ね。 空を見上げて呪ってやったら雨足が急に強くなった。 傘は持っていなかった。 スーツの何より嫌なところは、数が無いから雨に濡れられないことだ。 全くこの…

重力係数の低い放物線

職場の飲み会の帰り、ビール瓶を持ちながらテクテクと歩く。 つい30分前まで、当たり障りの無い話をしてニコニコ笑っていた自分の顔を引きちぎりたくなる。 特に吐きたくもないのに、植え込みに吐いてみる。 僕はいつも歩いている。 すれ違う人間全員に物理…

よるのロボット

よるのロボットが最初にみたのは、一面に広がる満天の星空でした。 遠くでトラックが走り去る音が聞こえました。 よるのロボットは、どうやら出荷される途中、何かの拍子でトラックから転げ落ちてしまったようでした。 製造番号SGG-09221-521137。これがよる…

グロテスクの海

金曜の夜。新宿。雨。 雨宿りをしながら、遅刻している友人を待つ。 行き交う人々を見ながら、人間の顔ってグロテスクだなあ、としみじみ思う。 特に笑った顔がグロテスクだ。 こないださうわ最悪雨じゃん早く来いよ彼氏の家に行くから居酒屋決まってますか…