重力係数の低い放物線


職場の飲み会の帰り、ビール瓶を持ちながらテクテクと歩く。
つい30分前まで、当たり障りの無い話をしてニコニコ笑っていた自分の顔を引きちぎりたくなる。
特に吐きたくもないのに、植え込みに吐いてみる。
僕はいつも歩いている。
すれ違う人間全員に物理的に噛み付きたくなるような気分になるのも
あらゆるものに救いを見いだせるような気がするのも歩いている時だ。


午後を元気にする魔法


蒼井優のポスターを見ているうちにどうしようもない気分になってきたので
僕はビール瓶を当然のように投げ上げた。
一瞬世界がスローになる。鈍い輝きがサイクロイドを描く。
やがてビール瓶は重力に屈し、歩道に落ちて粉々になった。
蒼井優はまだ笑っている。
周りの人間が不審な眼で僕を見つめてきたので、僕は走って逃げ出した。