サラマンドレ・サラマンドレ


「そもそも生物というものは両生類の時代からそれ以降、全く進歩していない。いやむしろ退化しているとすら言える。山椒魚は陸地で生活することは不可能ではないが、人類が水中で生活することは不可能ではないか」
チェコの権威ある生物学者であるサラマンドレ・サラマンドレ氏がごく親しい友人のアレクセイ・グロムイコ氏にこぼしたこのつぶやきは、しかしその意志に反してとある有力紙上に掲載された。そしてこの問いかけに対して、有力な反論が得られることはついに無かったのである。
また、件のグロムイコ氏に私的情報の保有に関する権利を侵害されたとしたサラマンドレ・サラマンドレ氏の訴えは認められ、グロムイコ氏は山椒魚の飼育用の水槽を20本、彼に寄贈することを裁判所から命じられた。


サラマンドレ・サラマンドレは新聞記者の両親の元に、次男として生まれた。
よく本を読む子供で、その頃から生き物の本ばかりを読んでいた。
5才の頃、突然自分は人間ではなくて山椒魚だと言うようになり、事実サラマンドレ本人もそう信じ込んだ。
学校が終わるとすぐに川に向かい、日が暮れるまで水に体を浸からせて遊んでいた。
名門の高校に入学する頃にはもちろんそのような妄想や奇行は治まっていたが、妄執とも言える山椒魚への情熱は残った。
そのときには既に生物学者になることを夢見、またその道を進んでいったのだった。
そして23歳の若さで「分泌液から考察する山椒魚間での相互的個体識別について」という論文で学会から注目を浴び、以後数々の重要な論文を発表している。
性格は皮肉屋ではあるが明るく活発、新しい考えに対しても柔軟に受け入れることが出来る。
趣味はキャンプ。
好きな映画は若い頃に中国で観た『霊幻道士』。
好きな本は『山椒魚戦争』。