キュビズむ。


全ての物事には理由がある。理由などあればあるだけ無駄だ。理由には必ず意味というこれまたくだらないやつが付いてくる。付いてこない。
男は海が見える路地にたたずんでいた。男は歩き続けながら考える。
つまり世界は意味と振動の対立構造なのだ。
男は何も考えていなかったので、辺りが暗くなりはじめていることにすぐに気付いた。夕闇。朝の空気は言うまでもなく冷たい。朝だというのに海辺には人が集まり、誰もいなかった。ただ波の音がアスファルトに振動を伝えるだけである。
男は人の声が嫌いだったので、ざわざわ言う人々の喧噪に心底嫌な気持ちになったが、元来耳は使い物にならないので平気なものだった。
特に男の目を惹いたのはある緑色の女性である。彼女の鮮やかな薄紫の肌は太陽の光を正しく反射し、男の頬を赤く染めた。
「あなたが」
彼女が口を開こうとすると、光たちは元の奔放さを思い出し、すぐに大人しくなった。男は口を開く相手もいないのでしばらく座り込んでいたが、すでに座っていたのでこれ以上座り込むことが出来なかった。
男は海が見える路地にたたずんでいた。走ることにもいい加減飽きてきたこともあり、男の頬を赤く染めた。
ようするに世界はチョコパイとイタリア人の対立構造なのだ。
水平線はただただ立方体の一端を垣間見せるだけで、決して男の前にその姿の全てを表すことは無いのだ。
男は立方体に思いを馳せながらたたずんでいた。
「あなたに」
男は立方体にたたずんでいた。
男は立方たた体にずんでいた。
方体立男にずたんたではいた。