2008-01-01から1年間の記事一覧

ブツギリ'08

歩くという行為は楽しい。ただそれだけで楽しい。 歩く場所はどこでもいい。 本を開いて文字を追っていく行為自体が楽しいのと同じだ。 内容なんてのはどうでもいいんだ。 線路沿いを歩いていて、僕を追い抜いて行く電車に乗っている人と目が合う。 僕は彼ら…

リフレク

嬉しくて悲しい。 好きだから嫌いだ。 楽だけど辛いよ。 大切だからこそ捨てるのです。 一人でいたいけど仲間が欲しい。 オシャレでいたいからダサくなる。 愛すべき呪いの言葉。 世界のあらゆる知りたくないことを知りたい。 矛盾している。 ある日、はたと…

のだ。

しかしだれもきてくれなかったのだ。 小さな画面の中で、クモのモンスターは孤独にたたずむ。 しかしだれもきてくれなかったのだ。 映像は1ドットも変化していないはずなのに、クモが悲しい顔をしているように見えた。 馬鹿みたいだ。 スパイダーはなかまを…

理解したい女と理解されたくない男

音楽とか、どんなの聴くの? まだあまり親しくない彼女が尋ねる。 えーと、多分わかんないよ。マイナーなやつだから。 言うだけ言ってみればいいじゃない。 エレクトロニカっていうジャンルの曲。知ってる? 知らない。聴かせてよ。 僕はポケットからiPodを…

ノイズ

4時前に起きる。半年ほど前から、生活を朝方に切り替えた。 入り込んで来る光は青く、未だ街が目覚めていないことを物語っている。 それでもこのあたりはかなり朝が早いのだけれど、と思った。 パソコンをスリープモードから復帰させ、音楽ファイルを開いた…

ルーレット6

目次 「運が良いんだか悪いんだか分かりませんね」 青目が苦笑いしながらこちらを見る。 「全くだね。ただ、酷い目にあったってことだけは確かだよ」 夜明けを待ってから外に出るという話でまとまり、皆それまでは休むことになった。村山は席を後ろに移動し…

ルーレット5

目次 コマ送りの録画映像を見ているように思えた。今日三度目の黄色い光と同時に望月の体が右に傾いた。銃口をあてていた方のこめかみが不気味にひしゃげ、少し遅れて反対側のこめかみが不自然に膨らんだ。弾けた。色水を詰めておいた水風船が割れた時のよう…

ネミングス

まだ言葉が発明されたばかりで、多くの物や気持ちや現象に名前が付いていなかった時代の話。 「君」 太った男が細身の男に対して声を掛ける。 「君!」再び太った男。慌てて振り向く細身の男。 「…あ!もしかして僕の事?」 「そりゃあそうだよ。だってここ…

冬のレストランに蟹

「大切なのは、このオシャレでおいしいカニのクリームパスタと、私が今から何時間後かにひねり出すウンチが、消化管で繋がってるってことね」 「は?」 およそレストランの雰囲気にそぐわない言葉。みどりは思わず間抜けな声を出す。 「これって世界の本質を…

夏のアーケードに雨

ほんの少し目を閉じていた間に、太陽が雲に隠れたらしい。樹木や雑草に覆われた共同墓地は薄暗くなり、やや湿り気を含んだ八月の風が吹き始めた。少し早い夕立が降るのかもしれないな、そう考えて彼女の方を見た。彼女も同じことを考えていたようだ。小さく…

ルーレット4

目次 「あ」 望月が何かに気付いたように車内を見渡した。 「うん、よし」 一人で頷いてニヤリと笑う。両替機から腰を上げた。 「ロシアンルーレットだ。ロシアンルーレットをしよう」 背筋に一筋の電流が走り、体中に散っていった。冗談でもなんでもない、…

ルーレット3

目次 望月が喋り出してもう五分は経っただろうか。今は好きな映画のタイトルを次々に挙げているが、聞いた事も無いタイトルばかりだ。緊張感は依然としてあるものの、車内にはうんざりした空気が流れ出していた。望月はそんな我々の事など意に介さず、気持ち…

ルーレット2

目次 男の迫力に押されるようにして座席に座る。ふと隣を見ると若い女が目を覚ましていた。今の怒声で起きたのだろう。不安そうに僕を見て、それから男のほうを見た。やはり事態が飲み込めないらしい、今度は車内をゆっくりと見渡す。と、 「はーい、みんな…